こんにちは。あさぎです。
今回は第165回直木賞、2022年の本屋大賞にノミネートもされた短編集「スモールワールズ」を読みました。
元々「イエスかノーか半分か」という作品からこの著者を知り、とても好きになり初のBL以外の作品ということでとても気になっていた作品です。
上記の作品もBL作品ながらそれ以外の部分もお仕事小説としてとても読み応えが。私も頑張るぞ!とやる気をもらえます。
今回の作品は「各々の人間によるほろ苦い人生」というべき作品。どんなに笑顔で幸せそうな人にも曇りや雨のような人生の時間があったりするのを考えさせられます。
読む人を選んでしまう作品なのかなとも思いますが、下記で一つでもきになった方にはぜひ読んでもらいたいです。
- 先の読めない短編集を読んでみたい
- 誰でもがもっているであろう「心の枷」を覗いてみたい
- 新しい作家を開拓したい
作品概要
あらすじ
夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。
感想
人生のほろ苦さ、人一人に各々の人生がある各々の「スモールワールド」。にこにこ笑って幸せそうにみえる人にも当然ながら曇りや雨の人生があったりするのを痛感させられる。当たり前なのだけども。
のどに魚の小骨が刺さったような読後感が多い短編集ながら、ラスト前向きな「魔王の帰還」が一番好き。魔王みたいなお姉さんがいたら幸せなんだろう。この何があっても前を向いていこうと思える真央の心強さがとても好き。
「ピクニック」ではラストの一文に背筋がぞくりと。そんなことがあり得るのかと。
「花うた」ではラストのあたりで自然に涙が流れていた。その涙がどういう感情によって流れたか自分でも把握できずに動揺したり。被害者家族と加害者との手紙でのやり取り。それによって加害者が今まで「当たり前」だと思っていたことが「当たり前ではない」と考えだしたり。被害者家族の心情の変化もあったり。「アルジャーノンに花束を」を思い出した。
「愛を適量」LGBTQのお話。愛の適量はどこまでか。感情による適量というものは一方通行かそうでないか。その差なのかなと考えてみたり。自分の子供が実は…と打ち明けられたら私は受け入れられるのだろうか。最後は少しずつながら分かり合えた親子が愛しい。
「ネオンテトラ」この主人公が個人的には一番怖かった。一番の狂気を感じた。子供欲しさにここまでやるんだ…というのが一番の感想。この話に繋がっているの「式日」。父親の葬儀の際に淡々と語られる心情。ネオンテトラを見たらこの作品を思い出すのかもしれない。
私の人生にも当然ながら晴れている時もあれば、曇りや雨な時もある。それに流されてしまうか前を向いて進むのか。できれば前を向いて進んでいきたい。止まない雨はきっとないのだから。
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